ポートフォリオとは、元々「書類入れ」つまり「書類を運ぶためのケース」のことを表し、個々の書類を別々に扱うのではなく、書類全体をひとつの物として扱うという意味をもっています。
投資の世界でも「所有する株式・先物・債券・不動産などの金融商品の組合わせ」のことをポートフォリオを言うのですが、EAでも複数の性質の異なるEA同士を組み合わせたものをEAのポートフォリオなどと言います。
目次
EAポートフォリオを組むべき理由
投資の世界では複数の資産に分散することが推奨されています。
つまり、1つの資産が何かの事情で大きく下がっても、他の資産価値が無事であるか、または他の資産の値上がりでカバーできることもあります。
よく「卵は1つのカゴに盛るな」と言われるのは、カゴを落として全部の卵が割れてしまうことを防ぐために、複数のカゴに分散して盛ることが推奨されているわけです。
また、これはEAに関しても同じで、どんなに優秀なEAでも1つでは相場と合わなくなった場合、利益を出すどころか損失を出すことになります。
そこで、例えば、順張りEAと逆張りEAなど、異なる戦略のEAを同時に稼働していれば、どちらかが損失を出しても、もう1つが利益を出して相互に補完し合うトレードが可能になります。
ここで3種類のトレードルールで組んだポートフォリオを見てみます。
以下は、3種類のトレードルールのEAを同時に動かした場合の月次損益の表です。
■EA①単体の収益
■EA②単体の収益
■EA③単体の収益
EA①~③を単体で見ると長期スパンで見ると利益が出ていますが、次期によっては損失続きになることもあります。
しかし、この3つのEAをポートフォリオを組んで1つの口座で運用すると、以下のように相互に補完されて相対的に損失の少ない滑らかな右肩上がりの収益曲線になります。
以下はあくまでサンプルですが、ポートフォリオ効果のスゴさが理解いただけたのではないでしょうか。
■EA①~③のポートフォリオ化した収益
EAポートフォリオのメリットとデメリット
ここまでの内容で、EAポートフォリオの概要について理解してもらえたものと思いますが、次はEAポートフォリオ運用のメリットとデメリットについて簡単にまとめてみました。
EAポートフォリオのメリット
- 利益を最大限に追求しつつ、リスク分散も図れる
- 上手く組めば、相場状況に左右されにくい安定した運用が可能になる
EAポートフォリオのデメリット
- そもそも良いEAを探すのが難しい
- 取引通貨やロット数など、各種設定の「最適解」を見つけるのが難しい
- 適切に組まないと、相場の急な変動で大きな損失を被ってしまう可能性がある
EAのポートフォリオ運用の最大のメリットは『利益最大化』と『リスク分散』です。
複数のEAを稼働することで、特定のEAに収益を依存せずシステム全体として収益を上げるように組み合わせたり、
順張り・逆張り・トレンド相場・レンジ相場など、異なる取引ロジックを組み合わせることで、突発的な相場の変動にも対応できるシステムを作り上げたりすることも可能となります。
また、上手くポートフォリオを組むことができれば、長く安定して利益を生み出し続けるシステムを手に入れることもできます。
ただし、逆に適切にリスク分散したEAを組めていなかった場合、どれか1つのEAが勝つ時は他のEA群も勝ち、負ける時にはその逆となりやすいため、たった1つの負けが致命的な大損になりかねないので注意が必要です。
それでは、次にポートフォリオ運用における『適切なEAの組み合わせ方』について解説していきます。
EAポートフォリオの組み方と考え方
ここからは、実際に複数のEAでポートフォリオを組む際の考え方や注意するポイントなどを解説していきます。
「複数Lotで運用するEA」や「複利運用のEA」は単体で運用する
複数Lotで運用するEAとは、ナンピン・マーチン系のEAのことです。
また、複利運用のEAは、口座残高に応じて自動で取引Lot数が変化するタイプのEAです。
上記2点は、他のEAに与える影響が大きくポートフォリオ運用向きのEAではないので運用する際は単体で利用するようにしましょう!
相関性の低いEA同士を組み合わせる
各EAの損益、ポジション数、エントリータイミング、決済タイミングなどの相関性が低くなるようにポートフォリオを組みます。
例えば、1日のうちに2つのEAの損失が被ってしまったとします。
この損益のタイミングが被る頻度が多いようだと相関性の高いEAの組み合わせということになるので、ポートフォリオには組み入れない方が良いです。
通貨の相関性を考慮する
FXでは、通貨間でも相関性は存在します。
例えば、NZDJPY(NZドル/円)とAUDJPY(豪ドル/円)などは相関関係の高い通貨ペアとして有名です。
「相関性の低いEAを組み合わせる」のと同じように、「相関性の低い通貨ペアを運用してリスク分散を図る」というのも、EAのポートフォリオ運用で重要なことです。
平均利益や平均損失、取引頻度などを考慮する
EAによって平均利益や平均損失、取引頻度は異なります。
例えば、『1日に3回平均で20Pips獲得するEA』と『1週間で1回平均100Pips獲得するEA』を同じロットでポートフォリオを組んだ場合、利益は前者の成績の影響がかなり大きくなってしまうのは明白です。
そのため、一定期間を通じて見た時に、各EA間で獲得利益に偏りが生じないように、それぞれのEAについてロット数を適切に調節することが求められます。
また、EAによって利益確定値(TP)・損切値(SL)の設定が異なるためロット数を決定する際は、その点も考慮に入れる必要があります。
最大ドローダウンを低く抑えることを優先する
ポートフォリオを組む一番の目的は『最大ドローダウン』を低く抑えることです。
バックテスト専用ツールなどを使えばポートフォリオの最大ドローダウンがどのくらいの大きさになるのか検証することが可能です。
ただし、バックテストデータから得られるデータは、過去の取引データに基づいたものなので、実際に運用するタイミングで最大ドローダウンが更新されてしまうことも十分にあり得ます。
よって、最大ドローダウンの期待値のみを過信せず、他のデータとの組み合わせの中で全体のバランスを考えたポートフォリオを組むようにしましょう。
まとめ
ポートフォリオ運用の基礎的な知識からメリット・デメリットまで理解していただけたのではないでしょうか。
ただ、ここで記述したことはあくまで理論値であって実際には過去データ通りにならないことも多くあります。
ただ、それでも適切にポートフォリオを組んで運用すれば、損失を減らし、勝てる可能性も間違いなく高まっているはずです。
ぜひ自分だけのEAポートフォリオを組んでみて下さい。
コメントを残す